小学校の算数を知ろう 5・6年(2)

日本数学協会幹事・多摩市立大松台小学校教諭  有田 八州穂
(「日本珠算」625号より)

小学校算数5年生の学習  6・7月

(学習内容)

  1. 小数のわり算:小数でわる意味、小数のわり算の筆算、小数のわり算と1あたり、あまりの位取り、商を概数で出す、小数倍、もとにする量を出す、文章題
  2. 合同な図形:合同の意味、合同図形の見分け、合同な図形の性質、三角形の決定条件、四角形の決定条件、平行四辺形の作図、応用問題
  3. 1学期の復習

 新指導要領が始まって2カ月がたちました。前の「ゆとり教育」の内容があまりにもやさしすぎたので、小学校現場の教員は新しい教科書に苦闘しています。

 分数のわり算とならんで一番難しい小数わり算です。とくに、「小数でわってなぜ1あたりが出るのか」の理解が最大のポイントです。教科書では「比の考え」で説明しています。しかし、比を表には出さないで説明しようとするので、ほとんどの教員と子どもにはわかりにくい。それが、小数のわり算の筆算の仕組み、次の単位あたりの量に結びつくので教える側がしっかり理解して教えないと計算力の定着も意味がなくなります。

 また、中学から下りてきた平面図形です。平面図形重視はよいことですが、中学につながる論証的な厳密な言葉遣いを意識して、すこし厳密に教えたいです。合同の基本は、2つです。三角形の決定条件とコンパスと定規を使った作図です。本当は、三角形の内角の和をやっておかないとだめなのですが。三角形の決定条件が合同条件と一致することを納得させます。それを、コンパスと定規だけで書くこと(ものさしや分度器はできるだけ使わない)を中心にやる。

5年生の問題 4・5月
5年生の問題 6・7月(pdf)

小学校算数6年生の学習 6・7月

(学習内容)

  1. 分数のわり算:分数のわり算の意味、1あたりを出す、分数のわり算の計算(式の同値変形)、分数の乗除混合計算、整数・小数・分数の混合計算、比と分数、分数倍と割合、応用問題
  2. 対称:線対称、対称の軸、線対称な図形の性質と作図、点対称、対称の中心、点対称な図形の性質と作図、応用問題
  3. 比:比の意味と表し方、比の値の意味、等しい比、比を使った適用問題、比例配分

 6年生は特に教えるのが難しくなっています。教員が「はじめて出会う問題」というのが多くなっていることと、「ゆとり教育」世代の教員が増加してることもあります。子どもはますます塾に依存する傾向が強くなります。珠算界もそのつもりで。

 小学校で一番理解が難しいとされる分数のわり算です。「なぜ逆数をかけるのか」をどう理解させるかがポイントです。1あたりを図で出す理解をさせた上で、式の同値変形で「逆数をかける」ことを納得させます。計算では、式を同値変形して、かけ算の段階で「約分」する、しかも、最大公約数を暗算で出して約分させます。

 中学から20年ぶりに下りてきた「対称」です。線対称、点対称ともに定義をはっきりさせ、性質と作図のやり方を理解します。平面図形の論証的な考え方を理解させ、図形感覚を磨きます。

 小学校で考え方は、3年のわり算以来どの学年でも出てくる考え方なのに、6年の今になってやっと出てくるのがこの「比と比の値」です。4年のわり算でも、5年の小数のわり算、割合、単位あたりの量、6年分のわり算でも比の考え方が出てきています。特に、文章から元にする量を見つけて比を割合も含めて立てることができるようにします。等しい比からX を使った方程式もやるといいのですが。

6年生の問題 4・5月
6年生の問題 6・7月(pdf)