日本のそろばん

中国では、そろばんのことを算盤(スワンパン)と言います。日本でも「サンバン」と言ってもおかしくありません。しかし、算木で行う計算のとき用いる盤を「算盤」(サンバン)と日本では言っていました。中国では算木に用いる盤はなかったようです。
そこで、算盤(スワンパン)が中国から伝わると、「さんばん」という別の言い方はないかと誰かが考えたのでしょう。
算には「sorとかsoun」(ソルとかソン)という音もあり、算木のサンバンと分けるために、「ソルバン」とか「ソンバン」と言って、後に「ソロバン」となったものと思われます。そろばんの当て字が58も発見されています。

日本への伝来

中国で発明されたそろばんが、日本へいつごろ伝わってきたかを裏づける資料です。

【日本風土記】(1570年代、中国)
1570年代、中国。侯継高(こうけいこう)撰。倭寇(日本の海賊)の被害に悩まされていた中国人の、日本および日本人を知るための研究書。これに、日本語の算盤の発音「そおはん」が載っています。「そろばん」を「そおはん」と聞いたものと思われます。
【陣中そろばん】(1592年)
前田利家(加賀百万国の大名)が陣中で使ったといわれているそろばん。日本最古のそろばんといわれ、縦7cm、横13cmの小型で、けたは銅線、玉は獣の骨です。
【ラ・ポ・日対訳辞典】(1595年)
日本にいた宣教師の書いた辞典。 ラテン語をポルトガル語と日本語に対訳したものです。
アバクルス:計算のために使われる器具。日本、算、そろばん。となっています。
【駿府築城図屏風】(1607年)
この発見までは、日本の絵に出てくるそろばんは、川越の「喜多院」にある「職人尽絵」(1670年頃、狩野吉信)が初見でした。

「九九」と「わり声」



九九も中国から伝わってきて、日本の書物で最も古く「九九」があらわれるのは、平安時代の「口遊」(970年、源為憲)です。これは当時の貴族の子弟教育の教科書でした。九九八十一から始まります。英語のアルファベットを「ABC」と言うように、九九から始まるから、1けたの乗法表を「九九」といいます。九九は、かける数がかけられる数と同じか大きい数になっています。
わり算では、左のような「わり声」(わり算九九)を用いて計算しました。

二一天作(添作)五は、
三一三十一は、あまり1
四一二十二は、 あまり2
五一加一は、
のことで、1を2でわるとき、1を5にします。 1を3でわるときは、1を3にしてとなりにあまりの1を加えます。1を5でわるときは、1に1を加えます。という答えと余りを暗記するものでした。